（二） 高度経済成長期で、ほとんどの人が結婚し、一丸となって豊かな家族生活を築くことを目指していた時代なら、夫は仕事、妻は家事・子育てに忙しく、 （ 1 ） ペットが入り込む余地はなかった 。家を手に入れたり、車や家電製品を揃え、子どもを育てたりすることにお金とエネルギーをかけるので精一杯だったからだ。自分の働きで豊かな生活を築いていることで、家族から必要とされている自分を実感していたのだ。 しかし、一度豊かな家族生活を手に入れてしまうと、家族の絆を実感したいという欲求が表に出てきて、現実にそれを実感する機会が少ないことに不満を持ち始める。理想的な家族への欲求と、現実の家族への不満、 （ 2 ） そのギャップ に入り込んできたのが、家族ペットなのだ。このようなペットの家族化に直面して、社会はどのような対応をすべきだろうか。 ここで、二つのことを （ 3 ） 押さえて おかなければならない。（ 4 ） 一つは、ペットを家族とみなして接している人々は、本当の家族の代わりであると信じているわけではない という点である。理想的な家族を実感したいという思いを、ペットという存在に投影しているのだ。つまり、ペットの家族化は、一種の （ 5 ） な現象であるということを押える必要がある。 1 . 「 ペットが入り込む余地はなかった 」のはなぜか。